下院議長案を上院が即日否決 米債務上限引き上げ問題

2011/7/30 10:46 日経

 【ワシントン=矢沢俊樹】米債務上限引き上げ問題を巡り米上院は29日夜の本会議で、下院が可決した財政赤字削減法案を否決した。事態打開に向けオバマ米大統領は同日、上院指導部に対し超党派合意を急ぐよう要請したが、依然として先行きは不透明だ。

 同日はまず野党が多数派である下院が夕刻の本会議で、ベイナー下院議長が策定した赤字削減法案を218対210の賛成多数で可決。議長は強硬派の多い下院共和党のとりまとめに辛うじて成功した形だ。

 同案は歳出削減を条件に、連邦債務上限を9000億ドル(約69兆円)引き上げ、来年1月に再び超党派検討委員会の合意に基づいて1.6兆ドルの上限上げを認める2段階の内容。ただ、ホワイトハウスはこの2段階引き上げ論について、「半年後に再び(債務問題を巡り)危機に陥る」として反対姿勢を崩していない。民主党過半数を占める上院は下院から同法案の送付を受けたものの、ただちに否決した。

 今後の展開は流動的だ。上院はリード院内総務(民主)らが策定した債務上限を一括で2.4兆ドル上げる独自案を31日にも可決する意向とみられる。ただ、上院案は反対派の議事妨害を阻止するのに必要な60票を確保できるかは微妙との見方もある。

 こうした動きと並行し、週末にかけて上院では、リード氏らが中心となって共和党が主導権を握る下院でも受け入れ可能な妥協案のとりまとめに向けた水面下の折衝を本格化する見通しだ。

 オバマ大統領は8月2日の債務残高引き上げ期限までに超党派の妥協案を提示するよう求めており、今週末にどこまで協議が進展するかに大きな関心が集まっている。