<おもて>と仮面(ペルソナ)

「仮面の解釈学」は坂部先生が30代のときに書かれた論考を集めた第一論文集。和辻論に通じる「ペルソナ」という表題がアタマに残っていたが、最初の章が「<おもて>の解釈学試論」だった。カントをはじめとして西洋哲学の源流を探ったが「かたりとふるまい」などの日本語を手掛かりとした独特の考察で有名な哲学者であった。はじめのはじめが「おもて」だったとは。役割論の前にあるのは、「思う」「重い」「面影」の「おも」だ。その先生に卒業時に喫茶店でたまたま「きみの卒論は面白かった」と言われていたのがいま改めて重大なコトバであったと感じる。第2章が「ペルソナ」論で、第3章には「ゾウは鼻が長い」の三上章にも触れた日本語論があり、最終章は、書下ろしで「しるし・うつし身・ことだま」。富士谷御杖を論じているのは、かなり新鮮にうつる。