佐賀知事:「再稼働容認意見も必要」…九電側に発言

 九州電力玄海原子力発電所佐賀県玄海町)2、3号機の再稼働を巡る説明番組を舞台としたやらせメール問題で、佐賀県古川康知事は30日、やらせの発端となる指示を出した九電副社長(当時)らに、再稼働を容認する意見の投稿を促すような発言をしていたことを明らかにした。原発の説明会を巡っては、国によるやらせが発覚したばかり。本来は中立の立場で再稼働の是非を判断すべき県トップの“誘導”が明らかになったことで、国民の原発不信はさらに高まりそうだ。

 緊急会見した古川知事は「軽率のそしりを免れないが、やらせを依頼したことはない」と述べ、発言がやらせに当たるとの認識はなかったと弁明した。

 知事によると、国主催の番組開催を5日後に控えた6月21日朝、退任あいさつのために訪れた段上守・前副社長や大坪潔晴・佐賀支店長ら九電の幹部3人と知事公舎で20〜30分間面談した。その際、番組についても話題となり、知事は「できるだけ多くの人に見てほしい」と伝えたうえで、幅広い意見を寄せてもらって議論を深める必要があるとの見解を示した。さらに「自分の所に寄せられる意見はほとんど反対意見ばかりだが、電力の安定供給の面からも再稼働を容認する意見も経済界にはあるように聞いている。この機会を利用し、そうした声を出していくのも必要」という趣旨の発言をしたという。

 九電が公表した報告書によると、3人は同日昼、佐賀市内の飲食店で会食した際に、番組への意見投稿を増やす必要性で一致しており、知事の発言が一連のやらせの引き金を引いた可能性が強い。会食後、部下らが「やらせメール」の発信などを指示し、関係会社も含めて一気に伝わった。段上前副社長らが知事と面会した際のやり取りは、報告書では一切伏せられており、信ぴょう性が問われることにもなりそうだ。

 九電側は、今月8日に松尾新吾会長が古川知事に面会について問い合わせたが、この際は「そうした要請はしていない」と回答した。27日に同社の第三者委員会の郷原信郎委員長から再度問い合わせを受け、急きょ会見を開いたという。

 古川知事は「より多くの人に見てほしいというのが一番の気持ちだった。番組は賛成、反対の声を競うものではなく、世論を形成しようとしたわけではない」と語った。【竹花周】

毎日新聞 2011年7月30日 20時29分(最終更新 7月30日 20時35分)