文人趣味とは

 文人趣味というものは、花を自分の机の隅に飾る、あるいは客が来た時に床の間のようなところにおく、そして花を楽しむという気持ちを植えつけたのです。その手続きを持ってきたのが、まあ複数いたでしょうけど、記録に残っているのは俊芿であり、曇照であるということです。
 文人趣味はやはり中国の、生活の趣味、あるいはあらゆるものに対する行き届いた趣味、焼き物も楽しむし、書も楽しむし、詩も楽しむ。早くいえば見るものすべてを楽しむ、つまり生活を楽しむ趣味として文人の間に発達したものです。
 文人という言葉は周のときからあるんですがね、宋の時代に非常に盛んになって、ツルを飼うとか、イヌ、ネコを飼うとかね、そんなことまで標準を決めてね、非常にものを見、感じる趣味が生まれてきたんです。庭なんか造るときも、いろんなむずかしい規則を決めたりしてね。それが日本に入り、生け花の伝書とか能楽の伝書とかが書かれていったんです。


細川護貞座談 文と美と政治と』(昭和59年8月13日 聞き手 光岡明)より