切手収集と短波受信

ひとりの趣味は他にもあった。切手のコレクションが最初の趣味だったが、不器用なのでアルバムにピンセットできれいに張り付ける作業が向かなかった。どういうわけか消印の付いた切手や使われた古いハガキなどが気に入っていた。通信という行為のほうに関心があったらしい。

ベリカードというのも集め始めた。海外放送を受信したという報告を放送局に送ると記念のカードが送られてくるというものだ。東芝のトライエックスというかっこいい短波ラジオを買ってけっこう集めた。普通のテレビやラジオには関心がなく、ひたすら海外の声に耳を傾けた。

これも番組といった内容よりも放送という営為に関心があったと思われて、ハム無線には走らずに、FMの微弱送信機を購入して、どきどきしながら第一声を発した。とうぜん応える者はいなかった。ずっとあとの自由ラジオへの興味やインターネットへの期待、ひょっとしたら個人誌発行やブックカフェ開店にいたるまでこの思いが続いていたのではないか。

切手のずいぶん後に、古本を集め始めた。記憶に残っているのはSFマガジンのバックナンバー。ただ雑誌を集めるという行為だったのかどうなのか。出版に関心があったわけではない。母親には、また切手と同じようなことになるわよといわれて反発したが、やはり同じで熱がさめると処分に困った。古本については未だに同じ繰り返しである。