日本の連歌と明治の漢詩

池袋の古本屋で、ドナルド・キーンの解説の付いた小西甚一「日本文学史」学術文庫版と、入谷仙介「近代文学としての明治漢詩」を購入。キーンさんは偶然、駅の売店でみつけて、当時京都から東京まで七時間の列車の旅中で読んだそうである。そしてとても著者に会いたくなって小西さんに会った。その後キーンさんは「日本の文学」を書き、吉田健一は偶然それを原書で読んで連歌を知った。小西さんはあとがきで、源氏物語について書かずに連歌のことを詳細に書いてあるキーンさんの著作に刺激を受けたという。それくらい「連歌」の扱いは日本文学史の中でポイントなのである。もうひとつが漢詩。それも明治の漢詩新体詩や翻訳詩の陰に隠れ今やその興隆を実感できる書籍はまるでない。入谷さんは京大系の中国文学者。きっかけは偶然、一冊の漢詩集を手に入れたことから始まる。出雲の山間部の村医者であった横山耐雪。中央詩壇からも孤立していて私も初めて名を知った。かつて坪内逍遥と勘違いして手に入れた「逍遥遺構」の中野逍遥が岩波文庫に入っているくらいで明治の漢詩はほとんど本になっていない。連歌と同じく日本文学史では欠かせない要素である。連歌漢詩こそがこの国独特のポエジーなのに。