【菅首相会見】 (3)「歴史がどう評価するか、後世の判断に委ねたい」(26日夕)

「とりわけ自衛隊が国家国民のために存在する、という本義を全国民に示してくれたことは指揮官として感無量であります。そして、明日に向けて生きようとする被災地の皆さん、それを支える被災自治体の方々、さらには温かい支援をくださっている全国民に対して、この場をお借りして心から敬意と感謝を表したいと思います」

 「大震災において日本国民が示した分かち合いと譲り合いの心に、世界から賞賛の声が上がりました。そして世界の多くの国々から、物心両面の支援が始まりました。必ずや震災から復興し、世界に恩返しができる日本にならなくてはならない、このように改めて感じたところです。特に大震災に当たっての米国政府によるトモダチ作戦は、改めて日米同盟の真の重要性を具体的に証明してくれました。安全保障の観点から見ても、世界は不安定な状況にあります。わが国は日米同盟を基軸とした外交を継続し、世界と日本の安全を守るという意志を強く持つ必要があります」

 「日本で開催した日中韓サミットでは、両国の首脳に被災地を訪問して頂き、災害や困難に直面した際に互いに助け合うことの重要性を共有できたと思います」

 「また今、世界は国家財政の危機という難問に直面しています。私は、首相就任直後の参院選社会保障とそれに必要な財源としての消費税について議論を始めようと呼びかけました。そしてその後も議論を重ね、今年6月、社会保障と税の一体改革の成案をまとめることができました。社会保障と財政の持続可能性を確保することは、いかなる政権でも避けて通ることができない課題であり、最小不幸社会を実現する基盤でもあります。諸外国の例を見ても、この問題をこれ以上先送りにすることはできません。難しい課題ですが、国民の皆さんにご理解をいただき、与野党で協力して実現して欲しいと切に願っております」


「私の在任期間中の活動を、歴史がどう評価するかは、後世の人々の判断に委ねたいと思います。私にあるのは、目の前の課題を与えられた条件の下でどれだけ前に進められるか、そういう思いだけでした。伝え方が不十分で私の考えが国民の皆様にうまく伝えられず、また、ねじれ国会の制約の中で円滑に物事を進められなかった点は大変申し訳なく思っています」

 「しかし、それでもなお私は、国民の間で賛否両論ある困難な課題に、あえて取り組みました。それは団塊世代の一員として将来世代に、私たちが先送りした問題の後始末をやらせることにしてはならないという、そういう思いに突き動かされたからに他なりません。持続可能でない財政や、社会保障制度、若者が参入できる農業改革、大震災後のエネルギー需給の在り方などの問題については、若い世代にバトンタッチする前に、適切な政策を進めなければ、私たち世代の責任を果たしたことにはなりません」

 「次に重責を担うであろう方々にも、こうした思いだけはきちんと共有してもらいたい。このことを切に願っているところであります。以上、申し上げ、私の退任のあいさつとさせて頂きます」