安東次男の俳句鑑賞から

 収録句は、井泉水を除いて編者(安東)が選んだ。俳句のようにとりわけ短い詩形の作品は、一息に読めなければ効果は半減しよう。やむをえず、原作にはないルビをおびただしく振る結果となったが、かえってそれが句の印象を弱めないかと怖れる。とくにルビ活字を等間隔とすることができなかった点で。しかし読者が必ずしも俳人でもなく、また現代俳句を読みなれている人でもないとすれば、これも止むを得まい。ルビを振るにあたっては、次の四点を基準とした。(一)俳句特有の慣行的読み方を採ったうえで、個々の作家の読み癖を尊重した。(二)それでも句によっては作者が別の読み方をしているかもしれないと思われるものは、自解のあるものはそれを参照し、また故人(蛇笏)を除いて、作者自身にただした。(三)作者の読み方の如何(いかん)にかかわらず編者が是非こう読みたいと思った若干の句については、あえて作者にたださずに編者の判断でルビを振ったものもあるが、それはそう読むことによってその句が面白くなると編者が眺めたものに限られている。(四)読者に強(し)いる限界を越すと判断したものは、あえてルビを振らなかったものもある。
 …(後略)
「日本の詩歌19 飯田蛇笏 水原秋桜子 山口誓子 中村草田男 萩原井泉水」より(下段鑑賞部分)「編集鑑賞のあとに」から