土器片に最古のいろは歌 平安後期、伊勢神宮斎宮跡で出土

2012/1/18 5:00 日経

 伊勢神宮に仕える皇女「斎王」が過ごした斎宮跡(三重県明和町)から出土した平安時代後期の土器片(11世紀末〜12世紀前半)に、平仮名で「いろは歌」が書かれていたことが分かり、17日、三重県立の斎宮歴史博物館が発表した。平仮名のいろは歌が書かれた出土品としては日本最古とみられ、宴や儀式ごとに使い捨てで用いられる皿に書かれている。

 同館は「筆跡が繊細で、斎王の身の回りの世話をする女官が文字を練習するために書いたのではないか」と推測している。

 「土師器(はじき)」と呼ばれる素焼きの土器の皿の一部で、約2センチ四方の土器片4個の両面に、墨で約1センチ四方の大きさの平仮名が記されていた。土器片をつなぎ合わせると、皿の内側に「ぬるをわか」、外側に「つねなら」と書かれていた。

 いろは歌は、平仮名などの文字を覚えるための手習い歌のひとつで、文献などから10世紀末から11世紀中ごろに成立したと考えられている。平仮名でいろは歌が書かれた木簡の出土例はこれまでにもあったが、岩手県の志羅山遺跡で見つかった12世紀後半のものが最も古いという。

 同館は「京の都の貴族文化が、斎宮にいち早く伝わっていたことを示している。いろは歌の普及を分析する上でも価値ある史料」としている。

 斎宮伊勢神宮に仕えるために都から赴任した未婚の皇女「斎王」が過ごした宮殿や役所。7世紀後半から14世紀前半まで約660年間続いた。平仮名が書かれた土器片は、2010年10月、宮殿があったと考えられている区域で見つかった。

 同館は今月21日から3月11日まで、出土した土器片を公開する。〔共同〕